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高齢猫の夜鳴きや粗相…それ、認知症のサインかもしれません

高齢猫の夜鳴きや粗相…それ、認知症のサインかもしれません

高齢になった猫に、夜中に大きな声で鳴く、トイレを失敗する、落ち着きがなくなるといった変化が見られることがあります。


「年を取ったからかな」と思いがちですが、こうした行動の背景に脳の認知機能の低下、いわゆる猫の認知症が関わっている場合があります。

人の認知症は、アルツハイマー型認知症や血管性認知症など種類がよく知られています。
一方、猫でも加齢にともなって脳が衰え、生活に支障が出る状態が確認されています。

ただし、猫の認知症はまだ研究段階で、人のように細かく分類されているわけではありません。

近年の研究では、猫の脳にも人のアルツハイマー型認知症に似た変化が見られる可能性があると考えられています。

猫の認知症は珍しくない

猫の認知機能の低下は、10歳頃から少しずつ見られることがあるとされています。
さらに、15歳以上の猫では半数以上に認知機能の低下がみられるという報告もあり、決して珍しいものではありません。

高齢猫と暮らすうえで、認知症は身近なテーマになりつつあります。

猫の認知症で見られやすい6つのサイン

猫の認知症には、犬の認知症研究で使われる「DISHAA(ディーシャ)」という考え方が参考にされています。
猫にも同じような変化が起こると考えられており、次のような症状が目安になります。

1. 見当識障害

慣れた場所でも状況がつかめず、混乱してしまう状態です。

  • いつも一緒にいる飼い主や同居猫がわからないように見える
  • ドアの開く方向がわからず、逆側に進んでしまう
  • 部屋の中で迷ったような行動をする

2. 睡眠サイクルの変化

昼夜逆転のような状態になり、活動時間が変わります。

  • 昼間によく眠る
  • 夜中に鳴くことが増える
  • 深夜に落ち着きなく動き回る

3. 活動性の変化

目的のある行動が減り、意味のないように見える行動が増えることがあります。

  • ぼんやりしている時間が増える
  • 無気力になる
  • 特に理由もなく鳴くことが増える

4. 飼い主やほかの動物との関わり方の変化

これまでとは違う反応をするようになります。

  • 今まで怖がっていた人に急に甘える
  • 逆に、よく懐いていた相手に無反応になる
  • 飼い主や同居猫との遊びに興味を示さなくなる

5. トイレや学習の忘却

覚えていたことができなくなったり、排泄の失敗が起こったりします。

  • トイレ以外の場所で排尿・排便する
  • 今までできていた習慣が崩れる
  • 覚えていた合図や行動ができなくなる

6. 不安の増加

不安感が強くなり、落ち着かなくなることがあります。

  • 飼い主の姿が見えないと鳴く
  • そわそわして落ち着かない
  • 要求が通らないと攻撃的になることがある

猫は変化に気づきにくい

犬では「散歩中に道がわからなくなる」など、老化や認知機能低下が目に見えやすいことがあります。
しかし、完全室内飼いの猫は行動範囲が限られているため、変化がわかりにくいのが特徴です。

毎日一緒にいると小さな変化を見逃しやすいため、“半年前と比べてどうか”という視点で見てみると気づきやすくなります。

  • 半年前はできていたことができなくなった
  • 半年前とは甘え方や怖がり方が変わった
  • 夜の過ごし方や鳴き方が変わった

こうした変化が見られたら、早めに獣医師に相談することが大切です。

認知症に見えて、実は別の病気のことも

高齢猫の行動変化は、すべて認知症とは限りません。
実際には、腎臓病、甲状腺機能亢進症、脳腫瘍、神経疾患、痛みなどが関係していることもあります。

たとえば、

  • 急に怒りっぽくなった
  • 触られるのを嫌がるようになった
  • 逆に急におとなしくなりすぎた
  • 昨日までと様子がまるで違う

こうした急激な変化がある場合は、認知症だけでなく病気の可能性も考える必要があります。

つまり、認知症かどうかを判断するには、ほかの病気を除外することが重要です。


場合によっては「はっきり認知症と断定できない」こともありますが、その際は病気の治療をしながら認知機能のケアも並行して行います。

攻撃的になった背景に認知症が隠れていることも

高齢になると、性格が少し変わることはあります。
ただし、

  • 急に噛む
  • 引っかく
  • 同居猫に攻撃する

といった行動が見られる場合、認知機能の低下や不安の増加が関係していることがあります。

これまで仲がよかった猫同士がケンカするようになったケースでも、行動診療によって改善が見られた例があります。

とはいえ、攻撃性の原因はひとつではありません。
痛みや病気、強いストレスが隠れていることもあるため、自己判断せず受診するのが安心です。

猫の認知症は治せるの?

残念ながら、一度失われた脳の機能を完全に元に戻すことはできません。そのため、認知症そのものを完治させるのは難しいと考えられています。

ただし、進行をゆるやかにしたり、症状を和らげたりすることは期待できます。


そのためには、生活環境の工夫、食事、適度な刺激、必要に応じた薬物療法を組み合わせていくことが大切です。

家でできる工夫1:食事や遊びで脳に刺激を与える

高齢になると寝ている時間が増えますが、だからといって「もう遊ばない」「もう何も興味がない」と決めつける必要はありません。

無理のない範囲で、“考える刺激”や“体を少し動かす機会”を取り入れることが、脳の機能維持につながると考えられています。

たとえば、

  • フードを少し工夫して探させる
  • 短時間でもおもちゃで遊ぶ
  • 部屋の中を安全に歩き回れるようにする
  • 毎日の生活リズムをできるだけ一定にする

こうした小さな工夫でも、猫にとっては良い刺激になります。

家でできる工夫2:抗酸化成分の補助

猫の認知機能低下には、活性酸素やフリーラジカルによる神経細胞へのダメージが関係すると考えられています。
そのため、脳の健康維持を目的に、抗酸化作用のある成分を取り入れる考え方があります。

代表的な成分には次のようなものがあります。

  • オメガ3脂肪酸(EPA、DHAなど)
    魚油などに含まれる成分
  • オメガ6脂肪酸(GLA、LAなど)
    大豆油やコーン油などに含まれる成分
  • ポリフェノール
    植物に含まれる苦味や色素成分
  • ビタミンC
    水溶性ビタミン
  • ビタミンE
    脂溶性ビタミン
  • プラセンタ
    哺乳動物の胎盤由来成分

最近は、こうした成分を配合したフードやサプリメントもあります。ただし、腎臓病などで療法食を食べている猫は自己判断で変更しないことが重要です。


フードの切り替えやサプリメントの追加は、必ず動物病院で相談してからにしましょう。

薬でサポートすることもある

現在、日本では猫の認知症専用として認可された動物用治療薬はありません。
ただし、症状に応じて以下のような薬が使われることがあります。

  • 不安をやわらげる薬
  • 行動の乱れを抑える薬
  • サプリメント
  • 場合によっては、人の認知症治療で使われる薬が検討されることもある

薬の選択は、猫の年齢や持病、症状の出方によって大きく変わります。
特に高齢猫では腎臓や肝臓の状態も関わるため、必ず獣医師の判断が必要です。

まとめ

高齢猫の夜鳴きや粗相、落ち着きのなさ、性格の変化は、単なる老化ではなく認知機能の低下が関係していることがあります。

猫の認知症はまだ不明な点も多いものの、

  • 見当識障害
  • 睡眠サイクルの変化
  • 活動性の変化
  • 関わり方の変化
  • トイレや学習の忘却
  • 不安の増加

といったサインが手がかりになります。

ただし、同じような変化はほかの病気でも起こるため、自己判断は禁物です。
「半年前と比べて変わった」と感じたら、早めに受診することが大切です。

認知症は完治が難しくても、環境の整え方や食事、遊び、必要に応じた治療によって、猫が穏やかに過ごせる可能性はあります。


高齢期の変化を“しかたない”で済ませず、やさしく観察してあげることが第一歩です。

D. Gunn-Moore, K. Moffat, L.A. Christie, E. Head (2007)
Cognitive dysfunction and the neurobiology of ageing in cats.
Journal of Small Animal Practice, 48(10), 546-553

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